埋没原価
企業のコスト計算の中に、「埋没原価」というものがあります。
これは、原価計算という学問の中の用語なのですが、
既に発生してしまっている原価で、将来の経営意思決定には影響を及ぼさない原価の事を指します。
大きな企業になればなるほど、コスト計算を少しでも間違えれば、インパクトが大きく、特にそれに基づいた将来の経営判断などは、
当該コスト概念もしっかり理解していないと、誤った方向に企業が進んでしまう事になります。
そのため、事業を運営するにあたっては費用の多寡も重要ですが、費用の概念として、かかった費用が埋没原価なのか否かという区別は非常に重要なものとなります。
そして、この「埋没原価」の考え方は、個人的には人生においても重要だと思っています。
私の場合は、大学に行って、さらに専門学校まで行って、公認会計士という資格を取り、
そこまでにかかった時間やお金を考えると莫大ですが、歩む中で違うと思ったら、あっさり方向転換して起業家として独立し、今では、そこで学んだ知識などほぼ使わないような分野の仕事をしています。
この方向転換の際には、将来の事のみを考え100%正しいと思ってそう決断しましたが、その時に、会計士の資格を取るまでの労力や費用などの事を考えたら、中々決断出来なかったと思います。
奇しくも、この「埋没原価」の概念を学んだのは会計士の受験時代で、
いつの間にかその考え方が自分の進路選択のときなどにも自然と考慮出来るほど、
私の中ではかなり主軸を担っている考え方です。
そして、この考え方を踏襲しているがためには、私の人生は常に「今」が最も充実した人生だと真に思え、未来の方がよりよくなると考える事が出来ます。
人は過去を美化し、過去を振り返る事をよくしがちですが、
性格もあるかもしれませんが、私はそういう事を全くしません。
そこまでやってきた事や労力、時間などはありますが、
重要なのは将来どうなりたいか(又はどうなっていたいか)が全てで、
そうなるためには、今何をしなければならないかを常に思考しています。
それまでにやってきた事の積み重ねで、自分の理想に到達出来るのであれば一番よいですが、
会計士の先輩の生き方が自分の理想ではなく、起業家で成功した人の生き方が理想だと思えば、
1秒でも早く方向転換をした方がよいというのが当時から今も変わらぬ自分の考え方です。
なお、昨日元本をなくしてしまう投資家の話をしましたが、これも埋没原価の概念で全て解決出来、相場は刻一刻と変わるので、
私の場合は常にその時点の状況のみで、判断を下すため、損切りも一切迷いません。
含み損の額がどれだけいっているかなどは、それまでにかかった埋没原価なので、考慮しても意味がないのです。
人間関係にこの埋没原価の考え方を用いるとかなりドライな人間に思われそうですが、ビジネスやトレードにおいては、
経済的合理性を追求するのみなので、埋没原価で感情を揺さぶられては絶対ダメなのです。
今一度、埋没原価が自分の意思決定に影響を及ぼしていないか考えてみる事をお勧めします。
埋没原価に支配される人生は非常にもったいないと個人的には思っています。